Caryの英語小説レビュー:To Kill a Mocking Bird. (アラバマ物語)

Caryの英語小説レビュー:To Kill a Mocking Bird. (アラバマ物語)

面白さ

★★★★★★☆☆☆☆

読みやすさ

★★★★★☆☆☆☆☆

語彙

★★★★☆☆☆☆☆☆

総評

Page turner(読みだしたら止められない)と言う感じの本では無い物の、マイルドに面白く、ストレスなく最後まで読み進められる。女の子の主人公、Scoutの子供の視点から見た1930年代の南部州アラバマをマイルドなユーモアを交えながら描く。

黒人をめぐる裁判と弁護する主人公の白人の父親という人種差別をめぐるヘビーな内容が話の大きな筋。

それ以外にも一見関係のなさそうな事柄や事件が全体に織り込まれているが、「当時の南部州」という共通点で全てが繋がっています。

各事件が微妙なかかわりを持っているので、一度本作を読み終えた後で、二度目意向に読んだときにまた新たな味わいを感じる事が出来ます。

アメリカの当時の世相を描いた作品として中学高校で教科書に採用されたりしているが、読み物としても面白い。

英語

本書は1960年代に書かれているので、全体的に文体は非常にスタンダードで読みやすい。

語彙量も一部昔の表現を含む以外は標準的で、John GrishamやStephen King位のレベルの本が読める人であれば、それほど辞書を引くのに疲れてしまう事はないです。

ただ、本書が アメリカ極南部、人種、身分、男女の役割、また裁判を扱うお話なので、それを反映した喋り口調が用いられていて、若干解読に苦労する所があります。

当時の黒人英語、白人弁護士の英語、白人婦人の英語、そしてWhite Trashと呼ばれる落ちぶれた白人の英語等が出てくるからです。

   記事一番下、教養のない英語についてを参照

読みどころ

当時の黒人の扱いと人種差別

 主人公家の召使いや、黒人教会の神父さん、そしてレイプの罪で告訴されてしまう誠実な男性トム、彼等の描写を通して、当時の黒人たちの扱いや、白人との関係がリアルに描かれています。

White Trash

 ゴミの白人という意味です。白人という有利な立場にいるのにも関わらず、駄目な生活をしている人たち、本書で黒人を無罪のレイプの罪で告訴するMayella Ewell、とその家族は学も無く、黒人たちの住処の近くに住んでいます。Mayellaの父、Bobは働いても怠けて解雇されてしまい、日々の生活を自治体からのrelief ticket(生活保護)でまかなっていますが、それさえも酒に使ってしまいます。子供たちは教育も受けずに字も読み書きできないまま動物のような生活をしています。そして自分達の不運は誰かのせいだといつも思っているのです。

このWhite Trashの人たちと真面目な黒人たちのコントラストを描いています。

裁判

 理論的に主人公の父、Atticusが 無罪の黒人、Tomを弁護し、Bobを追い詰めていくのはこのお話の中で一番のハラハラポイントです。弁護答弁を読みながら、犯罪の現場が解かれていきます。さながら推理小説を読んでいるようです。

深い南部

 この他にも、凝り固まった老白人、貧乏なので学校に一年一回しか来ない家族、家に一生ひきこもる白人Boo Radley、白人と黒人の混血のMr. Dolphus、お転婆な主人公に「女性の役割」を教えようとするaunt Alexandra、と他の地域との接点のあまりない、閉じられたアメリカ南部に生息する様々なタイプを象徴する人々が描かれます。

To kill a mocking bird. が「アラバマ物語」と訳されているのは、実は深い南部州のアラバマの世相を描いているからです。

早熟な主人公

 これは半分自伝ですので、作者の語りとScout,主人公の女の子の気持ちが上手く移り変わって書かれています。Scoutの気持ちは子供にしては大変早熟な、全ての物をドラマティックに表現する癖があり、読んでクスリと笑ってしまうユーモアがあります。

Scoutと兄のJeremyは当時10歳と12歳ですので、本当は裁判が理解できる訳も無いという話もあります。

この話の中ではいろんな事件が起こります。それが絡んでいないようで絡んでいたり、絡んでいる様でいなかったりして、この事件にはどんな意味があったのだろうと考えてしまいがちですが、半分自伝で、登場人物のほとんどが実在人物から、出来事のほとんどが実在事件からもじっています。

ですので、「どういう意味なんだ」と考えてしまうより、南部の描写としてみた方が良いです。

登場人物

Scout (Jean Louise Finch)

 主人公の女の子、作者の若い頃が投影されている。彼女の6歳から3年間が描かれている。

Jem (Jeremy Finch)

 Scoutの兄

Atticus Finch

 Scoutの父。弁護士。白人に訴えられた黒人の弁護をする事になる。人種問題のロールモデルと言われたりする。

Aunt Alexandra

 主人公の叔母。Scoutに女性らしさを教えようとする

Calpurnia

 Finch家の使用人。黒人。母親のいないFinch家を切り盛りする。

Dill (Charles Baker Harris)

 夏の間だけ叔母Miss Rachelの家に滞在する子供。ちょっとハイソで、演劇を提案したり、Booをおびき出すアイディアを出したりする

Boo (Arthur Radley)

 隣の家に生息し、一度も外に姿を現さない男性。リスを生で食べたりと化け物のような噂が立っている。皆家の前を通るのを怖がる。

Mayella Ewell

 黒人のTomが自分をレイプしたと訴える19歳の女性

Bob Ewell

 Mayellaの父。仕事もせず酒を飲んで暴力をふるうホワイトトラッシュ

Tom Robinson

 黒人の青年。レイプ犯として訴えられる。

Miss Maudie Atkinson

 主人公の前に住む未亡人。主人公たちの理解役

Miss Rachel

 Dillの叔母。夏の間はDillが泊まりに来る。

Miss Dubose

 いつも虫の居所の悪い白人老婆。

Heck Tate

 町の保安官

Judge Taylor

 裁判官

あらすじ

アラバマ、アメリカの深い南部州に暮らす、主人公の女の子Scout、その兄、Jem、そしてその父は弁護士をしているAtticus。

ScoutとJemそして毎夏その町に滞在するDillは3人で遊んでいるが、隣の家に住んでいる、一度も外に姿を現さないBoo Radley、怪物の様に噂される男性に興味を示し、外に連れ出そうとしていろいろちょっかいを出している。

Atticusは白人にレイプ犯として訴えられた黒人の弁護をする事になった為、Nigger loverとして町の特定の人達からは軽蔑される。

父がNigger Loverと言われた事でScoutは言った子供を殴ったり、Jemは言った白人老婆のMiss Duboseの家の花を蹴散らして、その後彼女に本を読み続けたりといくつかのトラブルに巻き込まれる。

裁判では見事にAtticusは原告のMayella EwellとBob Ewellを打ち負かすが、陪審員が白人だけの裁判では結局訴えられた黒人のTom Robinsonは負けてしまう。

この事件は子供のScout, Jem, Dillには非常にショッキングに映る。

誠実で害のない、黒人、Tomを死刑宣告にするのは、Atticusが言い聞かせているTo kill a mockingbird is a sin.(歌うだけで、全く迷惑をかけないマネシツグミは罪)に相反すると。

学校の先生はあれだけ無罪の人を虐殺したヒトラーを軽蔑するが、この哀れな黒人に対しては無情なのにScoutは違和感を感じる。

有罪になったTomは次の上廷での裁判を待たずに、刑務所から脱走を企て殺されてしまう。

裁判では勝利したものの、法廷で辱められたとしてBob EwellはAtticusの家族に復習を誓う。

ある演劇発表の日、田舎の暗い道を歩くScoutとJemにBobは襲い掛かるが、隣に住む奇妙な隣人、Booは子供たちを助けるため、Bobを刺し殺す。

保安官のTateは真実を分かりながらも、Bobは暗がりの中バランスを失い、自分で自分のナイフの上に倒れて死んだと結論付ける。

人との接触を避けて家に潜むBooを(子供たちを救ったヒーローだとしても)町の公共の場に引きずり出す事はTateはしなかった。

「Let dead bury dead.」「(Tomの)死に(Bobの)死を葬らせよう。」と彼は言った。

Scoutは、Tomのケースでは起こってしまったto kill a mocking birdを今回は起こさないようにしたのだなと理解する。

近所が火事になった時、凍える夜に立っていたScoutに毛布を掛けてくれたのもBooだったとScoutは思う。Booの家の前の期の節穴にガムなどのプレゼントが入れてあったのもBooがやったとわかる。

BooはScoutに家まで送ってくれるように内気に頼む。

ScoutがBooの家の玄関まで送ると、そこからは彼女たちの町の一つ一つの家と全ての活動が見渡せるのだった。

Booはここから南部の町のあり様を見ていたのだった。

映画版 To kill a mocking bird.

2時間の映画なので、小説のような「当時の南部を描写する」という所までは至っていませんが、南部で起こった人種差別問題と、奇妙な白人、そして

「to kill a mocking bird(歌うだけで悪さをしないmocking birdを殺す)のはSin罪だ」

というテーマは良く描かれていたと思います。

キャスティングはおおむね良いと思います。

Scoutもその兄のJemも小説を読んでいる時に思い浮かべていた彼等のイメージでしたし、弁護士の父のAtticusもイメージに近い感じです(ちょっといい男過ぎる気がしますが)

Mayellaのキャスティングも演技も良い感じです。

背景セットは原作者がそれを見たときに、「自分の生まれ育った南部の町そのものだ」 と涙したと言います。確かに張り出し屋根が広く、ポーチが大きい南部の家をきっちり再現しています。ただ、白黒映画できちんと見えるように作られているので、今の映画の背景と比べると、リアル感はちょっと少ないかな。

教養のない英語について

学校英語教育や英会話教室とは違って、このサイトでは一貫して「細かい英文法に縛られるべきではない」「伝える為に躊躇せずに沢山喋ろう」をポリシーにしています。

Caryのサバイバル英文法

しかし、正しい文法習得に意味があるとすれば、乱れた英文法を使う事はこの様に身分や教養の無さを表現する為に使われるからです。例えばこの本でWhite Trashは教養のないひどい文法の英語を喋ります。

He has done it.をHe done it.と言ったり、

I have seen it. を I sawed it.

I knew it. を I knowed it. と言ったりします。

主人公の家の召使いは黒人の中では正しい英語を喋る物の、怒って取り乱した時にはだんだん文法が崩れていきます。

 正しい文法で英語を喋るという事は、自分が「教養を受けた真っ当な人」と言う意味で大事なのです。

しかし、ここで気を付けなければいけないのは、この本のWhite Trashも、黒人も、英語ネィティブですから、「乱れた英語」しか喋れないという事です。

我々にとって英語は第二言語なのですから、話は違います。

自分の英語力よりも全然優れた思考があるのですから、英文法などに振り回されずに伝えた方が良いのです。

自分の英語力で、「大体どんなシチュエーションでも問題ない」という自信が付いたら、文法のエラーをなおしていくのが正しいタイミングかと思います。

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