
日本の社会、会社は根回しで調整される事で回っています。
根回しで調整されていれば、後は承認の順を追っていくだけで、問題なく通りますが、調整が出来ていない状態で前に進めてしまうと、予想外の問題が後から出てきてもつれてしまい、解決に時間がかかってしまいます。
水面下で意見の調整や見落としを潰しておいて、会議では滞りなく確認だけで済ませられるのが理想です。
会議で言い合いになったりすると、きっちり調整や準備も出来ていないで、会議の場でバタバタしているという、しっかり仕事が出来ていないイメージもあります。
日本では根回しがきちんと出来るのは仕事が出来る人の大きな要素ですね。
日本で社会経験をしてこのやり方に慣れてから米国に渡った人は、この根回しを当然の技として使ってしまいます。
ですが、これを米国人集団の中でやると、効果的でないばかりか、マイナスの効果も招いてしまうのです。
アメリカで働く。根回しをしたい日本人
アメリカ人にとって会議とは
まず、前提として、アメリカ人は会議を皆の立場で意見を出し合って、全員いるからこそ出来る判断をする物だと思っています。会社で言えば、社員は各専門の視点から意見をいう権利と義務があるし、リーダーは上手く動かして結論を出す義務があります。
皆、会議を少し緊張感のあるスポーツのような感覚でとらえています。
これを、例えば日系企業で日本人同士で結論をだいたい出してしまい、会議に臨んだ場合、アメリカ人からしてみれば、「自分たちをスルー」して、「日本人達だけで」「自分たちの知らないところ」で結論を出してきたわけですから、ルール違反だし、不公平だし、また民族的な隔離だと感じます。
疎外感も出てきますし、仕事に真剣に取り組む気もなくなってしまうでしょう。
それでは、日本人がアメリカ人もメンバーとして考えていて、アメリカ人社員も含めて“根回し“をしようとした場合はどうでしょうか?。
・後日に改めて皆の意見を交わらす会議があるのに、前もって一人日本人がやってきて、「本当の意見」を聞きに来る。
・何をしているのか知らないが、他の担当の意見もあるだろうに、自分の意見も考慮して何か決めるつもりでいるらしい。
・自分の意見はどういう風に使われるのだろうか?
・日本人が自分の意見を一対一の空間で言っていく。どことなくある特定の方向へ持っていこうとしている節があり、まるで選挙投票先を促されているようだ。
これは、アメリカ人からしてみたら、creepy as hell.「最高に気持ち悪い」です。
怪訝な顔をされるか、居心地悪そうに対応されるか、うまく流されるかだと思います。
腹を割らない
もう一つ根回しを避けられる理由としては、人と人との距離感もあります。
そもそも日本人に比べて米国人は距離を取りたがる傾向があります。お互い正体を見せて仲間かどうか、同じ勢力かどうかを確認しあう日本人の傾向に比べて、アメリカ人はやはり個人主義です。職場での人間関係、夫婦間の関係でも日本人のそれに比べてずっと“個人“が強い傾向があります。
個人が強いということは、共有する情報や感情もずっとコントロールされています。
日本人に比べてずっと距離を取っているのに、そこにいきなり入り込んできて、プライベートをにおわすような勢いで個人の意見を聞いてこられたら、ジャンプして逃げるのも理解出来るかと思います。
日本人が良く「腹を割って話せば」(level with someone.)と言いますが、この「腹を割る」への抵抗は日本人に比べて相当高いのが実情です。
貴方(達)にその資格があるか
アメリカ人が全員に腹を割らない訳ではありません。日本人が言う「腹を割る」とは少し違いますが、同じレベルの人たちと集まった時には沢山ゴシップもするし、いろいろ意見や文句を言いあいます。
ただ、外人で、英語が第二外国語である貴方にどれだけその資格があるでしょうか?どれだけ心に入っていけて、相手から仲間として受け入れられるでしょうか?アメリカ人同士でも、位の一つ高い人がいるだけで皆口を控えるのに、外人で、しかも位の高い貴方はかなり不利だと思ってよいでしょう。
つまり直球で言うと、アメリカ人は「貴方とは腹を割りたくない」というのが根回しをする上での障害にもなっています。
根回しをしたら
それでもなんとか根回しをしたとしましょう。もしくは貴方は根回しをしたと思ったとしましょう。
会議でうまく行くでしょうか?
貴方は、本音を聞けて、ある程度合意を取る事が出来た。落としどころも見つけられたので、会議では同調して貰えることになったと思っているでしょう。でも得てして起こるのは、
・同意してくれるという話だったのに、してくれない。むしろ反対意見を強く推してくる。
これらは本当に高確率で起こります。
貴方としては、「え?コンセンサスを取っておいたのに?」と思うかもしれませんが、彼らは不愉快な会話を早く流そうとして頷いていただけかもしれません。ただでさえ、目の前での対立を防ぐためにニコニコしているアメリカ人です。貴方と二人の時に対立なんてしたくありませんよね。でも皆の前での健全な場所なら安心ですから、きちんと対立します。
それに対して「合意したのにどういう事だ?」と言っても、「何それ?」と言われておしまいです。根回しとはだいたい一対一で行われます。二人で行われた事なので、何の証拠も証人もありませんから。
また、反対意見を推してくるばかりか、貴方が「腹を割った」際に共有した情報を逆手にとって使ってくる事もあります。
日本人としては、これは裏切りですが、きっとアメリカ人の中では、最初に根回しという反則をした人に対して当然の報いだと思っているかもしれません。

根廻し 結論
貴方がカジュアルに話してアメリカ人の集団の懐にスッと入っていくことが出来、彼らの会話や気持ちを誘導する事が出来るくらい話術、人柄が長けている場合を除いてーー
根回しはやめておいた方が良いです。
いいことありません。
それではどうするのか、
私がまさに根回しをしようとして失敗した時に私の見方だったアメリカ人の上長がくれたアドバイスは「一対一で喋るのは危険だからやめろ。きちんと証人がいる状態で話すべきだ」でした。
証人がいる場所で話しをしましょう。
結局会議で、皆の前で、各専門が全ている前で話しをしましょう。リーダーだったら、会議をどこに着地させたいかを頭において話しましょう。
それは、数人から数十人のアメリカ人を目の前に話すことでもありますが、それが仕事を進めるためには必要なのです。
第二言語な事もあり、日本人は集団での格闘会議よりも一対一を好みます。でもこれは避けては通れない事なのです。
米国日本支社でのノウハウをまとめています。